団地内で地域の健康を守る「茶山台ほけんしつ」〜③出張オークカフェ・みんなの保健室編〜
団地にまつわるストーリーを、泉北エリアの情報誌をつくる『RE EDIT〈リ エディット 〉』編集部が、2022年6月よりお届けする「わたしのダンチ・ライフ」。
①②に引き続き今回も「茶山台ほけんしつ」で行われている二つの取り組みをご紹介します。
「茶山台ほけんしつ」では、介護、健康、医療に関するイベントが行われています。
カフェや相談会があったり、健康体操があったり、マッサージを受けられる日があったり、介護や医療に関するプロとお話する機会があったりと、曜日によってさまざまな専門分野の方と話し、触れ合える場所になっています。
月曜日に行われているのが「出張オークカフェ」です。
「オークカフェ」とは、茶山台の坂を下ったところにある地域密着型特別養護老人ホーム社会福祉法人よしみ会グランドオーク百寿(注1)内の1階にある、一般の方も利用できるカフェです。
子どもから高齢者まで地域の人々が集まる憩いの場所になっていて、地域とのつながりが深い施設です。
その施設に勤務する相談員の岡村さんと田淵さんが「茶山台ほけんしつ」で月曜日に「出張オークカフェ」を開催しています。
施設に入居する前から一人一人の生活様式や暮らしたい姿などをお聴きするため、相談員が施設内のオークカフェの店頭に立ち、地域住民さんと触れ合うことから始めたそうです。
足を運んでくれる住民さんたちと顔見知りになり、会話が弾むようになってきたころ「茶山台としょかん」で介護について相談できる場所を作りたいという話が舞い込んできました。
「介護の相談会」と銘打ってしまうと敷居の高さが感じられることから移動カフェのような気軽に行ける場所として「出張オークカフェ」がスタートしました。
おいしいコーヒーやお菓子を楽しみながら、住民さん同士の会話の中で「介護」の話題になった時、すぐにプロに相談できる環境が整っています。
そして2023年10月、設備も新しくなり「出張オークカフェ」は「茶山台ほけんしつ」で開催されることになりました。
カフェがオープンすると続々と住民さんたちが集まり、テーブルを囲んでわいわい話が弾んでいきます。
皆さんが集まるこちらのテーブルは「皆が顔を見合わせて話ができるようにしたい」との思いから、もともと四角だった形を削り丸くしたそうです。このテーブルはDIYのいえ(注2)のメンバーが作ってくださいました。
コーヒーを入れる岡村さんは「入れているとキッチンの方を向いてしまうので、皆さんに背中を向けてしまうのが申し訳ないし、寂しいんです」と抽出の間にも、ときどき振り返って住民さんのお話を聞いておられました。今後はカウンターを設けて、向かい合わせでコーヒーを入れられるように準備中なのだとか。
住民さんとの関わりを大切にしている姿勢や、こまやかな気配りに安心感を覚えます。
相談員のお二人から、あえて「介護」についての話を始めることはないそうですが、なぜかその話題になることが多いそうです。重い空気感ではなく、普段の会話からの延長線で相談できる手軽さが魅力の一つです。
岡村さん「僕らが元気をもらえて楽しいです。人生の先輩方の話を聞くと、自分もがんばろうって思いますし、勉強になる話も多いです。相談員でラテアートを練習している人なんてなかなかいないと思います(笑)それに話し合える場所があるのが暮らしへの安心につながって、ずっと住み続けたいまちになっていくのかなと思うので、その安心の一つになれたらいいなと思っています」
田淵さん「だんだんと顔なじみになれてうれしいです。まちを歩いていても声をかけてくれたり、りえちゃん!って名前で呼んでくださったりして」
お二人の人柄あっての場所づくりを感じました。一人一人の人生を大切に考えておられるお二人の心が伝わって、ついつい何でも話したくなりますね。
出張オークカフェは月2回、月曜日の10時〜12時に開催しています。ぜひお二人に会いに行ってみてください。
水〜金曜日に実施されているのは「みんなの保健室」です。こちらは「団地ライフラボ(注3)」の取り組みの一つです。
始まりは2022年秋ごろ。茶山台ほけんしつの隣にある「やまわけキッチン」内でスタートします。初めは、スタッフが住民さんたちと一緒に食事を取り、関係性ができてくると少しずつ体に関する不調などを話してくれるようになっていきました。
現在、コミュニティナースは、看護師の野本さん、ケアマネジャーの経験がある野津さん、英国リフレクソロジーの資格を持つ澤谷さんの3名です。
新しくできた「茶山台ほけんしつ」に拠点を置き、水曜・木曜の平日には健康・医療に関する相談や健康体操、カフェの時間を設けており、金曜日は澤谷さんによる「もみほぐし」が開催されています。
今回は、水曜日の健康体操とカフェの日に取材にお邪魔しました。
団地に暮らす住民さんの中に「暮らしが大変そうだな…、何かできることはないだろうか」と思う方を見かけても、できる限りのことをするにとどまっていたところ、少しずつ仲間が集まり「みんなの保健室」を開くことができるようになりました。
「コミュニティナース」という名の、地域に根差した医療や健康に関する相談役が在籍するチームが「みんなの保健室」です。
この日は、看護師の野本さん、ケアマネジャーの野津さんが進行していました。初めに、全員でごあいさつ。お名前と茶山台在住歴を発表していきます。団地内でも部屋を替えて住み続けておられる方もいれば、中には在住歴53年という方も!
「昔は道がアスファルトではなく整備されていない道で、雨の日は歩くのが大変な日もあったよね!」と昔話を共有していました。
体操が始まる前にこうした会話があり、場が和んで楽しそうな雰囲気です。
健康体操の時間が始まりました。ラジオ体操からスタートしていきます。なじみのある体操なので、それぞれのペースで立ったり座ったりして行われています。
その後、音楽に合わせて座って行う体操が始まります。ゆったりとしたリズムで主に上半身の運動をしていきます。
次は週替わりでテーマが変わる体操です。今回は、筋トレ・脳トレ・ストレッチを組み合わせたいつもより少し長めの体操です。腕や手、足を同時にさまざまな方向に動かします。 週替わりなので、尿漏れ予防体操や、不眠解消体操、ダンス、転倒予防体操、歌体操などなど、楽しく体を動かしたり、気になる症状別の体操があったり、飽きの来ないプログラムです。
体操の後は、テーマに沿ったプチセミナーやセルフケア講座、レクリエーションなどを楽しみます。
今回は輪投げのレクリエーション。点数付きなので誰が一番高得点かを競います。勝負ではありますが、皆さんで応援し合って、高得点の棒に入った時には拍手も生まれ自然と会話も弾みます。
体を動かした後は、隣の部屋に移動してカフェの時間。体操のみ、カフェのみに参加することも可能なので出入りは自由です。
スタッフの野本さん、野津さんも一緒に円卓に座って会話を楽しみます。
やがて話題は医療関係の内容に。医療の話になると、少し深刻な内容も関わってきますが、一つ一つ丁寧にお話を聞いていきます。
野本さんは、何かを意見するのではなくお話を親身に聞くことを大切にしているそう。「話すことで頭の中が整理されていくことが多いので、心の内を話せるようにゆっくり聞くことを心がけています」真剣で優しいまなざしからもその思いが伝わってきます。
野津さんは、「私も茶山台団地の住民なので、住民目線でいることを大切にしています。子どもをかわいがってもらえることもうれしいし、何より皆さんに会えるのが毎回うれしいです」とご自身もこの会を楽しんでおられるようでした。
気軽に誰でも来てもらえたらうれしいとお二人。気軽に入ってきてもらえるように扉はいつもオープンにしているのだとか。ぜひお二人の笑顔を見に遊びに行ってみてはいかがでしょうか。
「茶山台ほけんしつ」の取り組みを半年間に渡り取材してきました。それぞれの企画で違った良さや空気感があり、参加している方々の色もさまざまでした。
そして共通するのは、住民さんに暮らしの心地良さや安心を届けること。何か事が起きても「あそこに行けば大丈夫!なんとかなる!」と思える場所があるなんて、筆者も同じ団地の住民として心強さを感じました。
【注釈】
注1)社会福祉法人よしみ会 グランドオーク百寿
堺市南区茶山台にある、地域密着型特別養護老人ホーム。「ちゃやフェス」に代表される地域住民さんと共同で行うイベントなどさまざまな地域活動を行う。建物内のカフェでは、入居者さんと同じ健康に配慮されたメニュー「オークランチ」が人気の商品。
注2)DIYのいえ
茶山台団地16棟の空き室にあり、初心者でも安心してDIYの体験や相談ができるワークスペース。あらゆる工具が揃い、誰でも無料で使用できる。DIYの達人が手取り足取りサポートしてくれるので、手ぶらでまずは行ってみて。
営業:土・日の10:00~17:00
※営業状況など詳しくはフェイスブックでご確認ください
注3)団地ライフラボat茶山台
2022年7月に、30〜40代の団地住民が中心になって立ち上げたNPO法人。少子高齢化が加速する団地に対して、地域の声・困り事をみんなのアイデアで解決する環境を作り、暮らしの身近な存在として、こまやかな対応をしていくことで、住民一人一人がその人らしい暮らしができる「日本一多様な幸せが実現できる団地」づくりに寄与することを目的としている。