私のダンチ・ライフ「泉北ではじめる自分らしい暮らしかた」

子どもと団地で迎える、初めてのお正月

わたしのダンチライフ
2023.02.24

団地にまつわるストーリーを、泉北エリアの情報誌をつくる『RE EDIT〈リ エディット 〉』編集部が、2022年6月より全10回お届けする「わたしのダンチ・ライフ」。

第8回目は、近隣の団地のイベントに参加して、間接的に“団地のある暮らし”に触れている和佐(RE EDIT編集部デザイナー)が、娘を連れて取材に伺いました。今回は、お子さんが生まれてはじめてのお正月を迎えるご家族をご紹介します。

取材先はいつもRE EDIT編集部でお世話になっている岡本由比(ゆい)さんご家族。由比さんは理学療法士として勤める一方、ヨガインストラクターとしてもご活躍されています。
ベランダから眺める景色にひかれて、旦那様が暮らしていたお部屋に、ご結婚されてからも家族で暮らしているそうです。

2022年に生まれたお嬢さんと、初めて迎える団地のお正月。お邪魔したこの日は、お母様の幸子さんも来られていました。

お年玉をもらうお嬢さん。祖母である幸子さんに抱っこしてもらい、落ち着いてうれしそうでした。

ダイニングテーブルに置かれていたおとそセットは、由比さんのお祖母様が、自身の結婚時に念願叶って揃えたという60年もの。

漆塗りの色目も今となっては珍しいそうです。「お婆ちゃんのおとそが活躍できた」と由比さんもうれしそうに話していました。

お嬢さんも一緒にテーブルにつき、おせちを囲んでいます。全て手作りの豪華なおせちは、団地からほど近いspace.SUEMURA(注1)で有志が集い、年末に作られていました。

自分たちが食べたいものをみんなで作る『おせちづくりの会』。由比さんもお嬢さんを背負いながら調理していました。飾り切りや手の込んだ料理はおせちならでは。38名分のボリュームは圧巻です。筆者も年明けにいただきましたが、絶品の数々に舌鼓をうちました。

昔は親戚じゅうが集まって作っていた懐かしい風景が、団地の近くで繰り広げられていることに、不思議さと感慨深さが込み上げました。しきたりや義務感があるからではなく、みんなで作ると楽しいし、食べたいから作る。何より子育て中は手の込んだ料理もハードルが上がるなか、こうした取り組みは本当に有り難いと感じました。

食事も済んで、おもちゃで遊ぶお嬢さん。部屋中がきれいに整頓されていて、ものの少なさに驚きました。子どもが生まれると、ついつい色々と買ってしまうわなにはまりがちですが、必要最小限しか購入しない無駄のなさにも、由比さんらしさが光ります。ちょうど一人歩きが楽しいお年頃ということもあり、お嬢さんが自由に歩き回っていました。

おもちゃも厳選されていると思いきや、全て譲りもの。由比さんが所属されているsenboku yoga(注2)やspace.SUEMURAのスタッフの方々から譲り受けたそうです。子育て中のスタッフも多く、子どもの年齢差があるので、子育ての先輩がたくさんいる状況は心強い。団地暮らしであるRE EDIT編集長の山田さんも、ご近所の方から譲っていただいた経験があるそうで、団地らしいコミュニティーを感じました。

室内には至るところにベビーゲート・パーテーションが張り巡らされています。うまくかいくぐる手法を覚え始めたお嬢さん。そういえば筆者も子どもが幼い頃はゲートに囲まれた生活だったと、懐かしさとほほ笑ましさを感じつつの取材でした。

実は10歳になるまでは団地暮らしだった由比さん。お母様の幸子さんより当時のお話を伺いました。

団地の室内は段差も少なくフラットで、子育てしやすい部屋の造り。当時暮らしていた部屋は、現在の由比さんのお住まいよりもひとまわり広く、収納も多かったので助かっていたそう。

4階だったので二人の子どもを連れての階段移動は大変。とはいえ子どもは階段があれば上り下りしたがるので、当時幼かった由比さん自ら頑張って上ってもらったことが、運動神経の良さにつながっているのかもしれません。

そんな団地暮らし経験者のお母様から“子育てあるある”とともに、我が子への愛情が娘の由比さんへ引き継がれているようでした。

親子が集まれば、昔懐かしい話題に花が咲くもの。幼い頃の失敗談に渋い気持ちになりながらも、改めて親への感謝の気持ちをかみ締めるのではないでしょうか。筆者の子どもが生まれて間もない頃の、母との会話を思い出し、胸が熱くなりました。

ふと見れば、子どものあやし方が上手なお母様。由比さんが用事をしている時に、お嬢さんの相手をしていたり、筆者の子とも自然に遊んでくださっていました。

こちらは由比さんお気に入りのベランダから眺める景色です。周辺エリアが一望でき、夕方には遠く夕陽に照らされた海の水面が見える!とのこと。

由比さんのお部屋に伺って、ミニマルながらも充実した団地暮らしと、子育て世代には心強い、団地ならではのコミュニティーを感じました。

取材を終え、茶山台団地の中央に位置する、愛称「大階段」を抜けて帰路につきました。今回初めて団地のお部屋にお邪魔させていただきましたが、周りには小さな広場や木々が並び、愛称で親しまれる大階段があり、改めて住人に愛される団地の魅力を教わった気がします。

 

【注釈】

注1)space.SUEMURA
循環型社会を目指し「旧泉北すえむら資料館」の収蔵棟をリノベーションした、カフェ・レンタルスペース兼、泉北エリアのアンテナショップ。堺市南区の大蓮公園内にあり、RE EDIT編集部の拠点でもある。

注2)senboku yoga
身体と心に気づきを向けるヨガ習慣の普及と、あたたかい循環が促進されるコミュニティー作りを目指す。収益のうち必要な運営費を差し引いて、必要とされている先に「寄付」という形で「循環」させている。

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